どうもマツローです。

エンゼルスの大谷翔平選手が、2018年のアメリカン・リーグ「ルーキー・オブ・ザ・イヤー(新人王)」に選ばれ、日本人メジャーリーガーとしては2001年のマリナーズ・イチロー選手以来となる、4人目の快挙となりました。

そんな大谷選手ですが、シーズン開幕前は「二刀流」について懐疑的な意見がみられていました。
しかしシーズンが開幕すると、その意見はすぐさま期待に変わります。
結果、投打にわたる活躍が評価され、全米野球記者協会の投票者30名中25名が大谷選手に1位票を投じるという圧倒的な支持を得て、見事に新人王を受賞したのです。

圧巻のルーキーイヤーを過ごした大谷選手ですが、新人王を獲得するには2つの大きな壁があるとみられていました。

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日本人メジャーリーガーに立ちはだかる壁

これまでに日本人選手が新人王を獲得したのは3名。
1995年に“トルネード旋風”を巻き起こした野茂英雄投手、2000年には“大魔神”こと佐々木主浩投手が、そして2001年に“Wizard(魔法使い)”ことイチロー選手が獲得したのを最後に、日本人選手の新人王を獲得はありませんでした。

野茂投手は最多奪三振のタイトル獲得以外にも防御率2位、優勝の原動力になったことが評価されました。佐々木投手の37セーブは当時の新人記録を更新し、イチロー選手は首位打者・盗塁王など数々のタイトルを獲得し、新人王とMVPを同時に受賞するという、華々しい成績を残しています。

しかし当時、日本のプロ野球界で主力選手として活躍した選手を新人扱いするのはおかしいという意見もあり、その後は実績ある日本人選手の新人王獲得に厳しい風潮が根強く残りました。

そのあおりを受け、2003年の松井秀喜選手・2012年はダルビッシュ有投手が、シーズンを通して故障者リスト入りすることもなく、素晴らしい成績を残しましたが、新人王受賞とはなりませんでした。

ルーキーイヤーの松井・ダルビッシュ両選手の成績です。

松井秀喜(29歳)
623打数179安打 打率.287 16本塁打 2盗塁

ダルビッシュ有(26歳)
29試合16勝9敗 防御率3.90 奪三振221

また新人王を獲得した日本人選手の成績は以下の通りです。

野茂英雄(27歳)
28試合13勝6敗 防御率2.54 奪三振236

佐々木主浩(32歳)
63試合2勝5敗37セーブ 防御率3.16

イチロー(28歳)
692打数242安打 打率.350 8本塁打 56盗塁

大谷翔平(24歳)
10試合4勝2敗 防御率3.31 奪三振63
362打数93安打 打率.285 22本塁打 10盗塁

※()内は当時の年齢

大谷選手は右ひじ靭帯の損傷で故障者リスト入りしたこともあり、新人王を受賞した3選手に比べて試合数も少なく、チーム優勝の原動力となったということもありません。

そして大谷選手の新人王受賞にはもうひとつ、越えなければいけない壁がありました。

ライバル達との新人王論争

新人王を争うライバルには、ヤンキースのミゲル・アンドゥハー選手・同じくヤンキースのグレイバー・トーレス選手がいました。

両選手の今季の成績です

ミゲル・アンドゥハー
573打数170安打 打率.297 27本塁打 2盗塁
グレイバー・トーレス
431打数117安打 打率.271 24本塁打 6盗塁

大谷選手・トーレス選手は規定打席に到達しておらず、この条件をクリアし高い攻撃力を印象付けたアンドゥーハー選手が、新人王の最有力候補と言われていました。

しかしアンドゥーハー選手は守備に難があり、今季15失策。セイバーメトリクスの守備力を評価する指標では、全30球団の三塁手の中では最低レベルにあります。

一方トーレス選手は欠点が少なく、攻守にわたり安定した成績を残していますが、新人王受賞には、少々インパクトに欠けるといった意見も見られました。

大谷選手が打撃成績で両選手を上回っているのは、出塁率と長打率のみ。
しかし「限られた出場機会の中でも指名打者としてチームの勝利に貢献した。」という意見もあり、他の2選手よりも少ない打席での22本塁打は、これまでの日本人選手とは一線を画したパワーを印象付けました。

それを裏付けるかのように大谷・アンドゥハー・トーレス3選手の“本塁打率(何打席に1本ホームランを打つか)”はアンドゥハー選手が「21.2」、トーレス選手が「17.9」に対し、大谷選手は「14.8」と二人を圧倒しており、メジャー全体でもトップクラスの成績となっています。

また、投手としては僅か10試合の登板となりましたが、“奪三振数が投球回数を上回っていること”など、大谷選手の持つ投手としてのポテンシャルの高さは、ふたりのライバルにはない大きな武器でした。

「大谷より良い打者も優秀な投手もいる。しかし大谷のように良い打者であり優秀な投手である選手は他にいない」。今季、メジャーリーグ関係者の多くにこういった意見がみられました。
投げて、打って、走る、そのどれもが一級品。そんな野球選手としての総合力の高さとインパクトは、全米の野球ファンにある夢を抱かせたのです。

ファンを魅了した「二刀流」への夢

メジャーリーグ史上、最も野球ファンから愛された選手といえば、“野球の神様”と呼ばれたベーブルースが思い浮かびます。

ひとつのシーズンに投手として2勝し、打者として20ホームラン以上という成績を残したのは、そのベーブルース以来97年ぶりなのだそうです。

子供の頃から野球をプレーし、はじめは「4番でエース」であった選手も、大抵はどこかのタイミングで打者か投手を選択します。
しかし大谷選手はその枠を超え、世界最高峰の場であるメジャーリーグにおいて高いポテンシャルで、約100年ぶりに二刀流を成し遂げました。
この挑戦は、野球を愛し、野球を楽しむすべての人々を虜にし、どれだけ多くの夢を与えたことでしょうか。

新人王には輝かしい成績も必要ですが、夢のある選手がふさわしい。
今も変わらないベーブルースへの敬愛と約100年間誰も成し得なかった偉業に対する全米からの答え、それが大谷選手の新人王受賞なのだと思います。

右ひじ靱帯再建手術を受けた大谷選手は、来季6月からの復帰を目指し、当面は打者に専念する予定です。そして投手としての復帰は2020年以降になるとみられています。

挑戦は人々を魅了します。その壁が高ければ高いほど。

大谷選手の二刀流が再びメジャーリーグのマウンドで見られるとき、さらなる祝福が訪れることを願います。

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