【動画あり・米球界のトップ・プロスペクト】ソフトバンク新加入のカーター・スチュワート・ジュニア投手について

どうもマツローです!

福岡ソフトバンクホークスは5月25日、2018年のMLBドラフト1巡目指名(全体の8番目)を受けた右腕、カーター・スチュワート・ジュニア投手の獲得を発表しました。

これまでは考えられなかったスチュワート投手の契約は、ある意味では現行のMLBの制度の弱点を突いた契約でもあり、日米野球界に風穴を開けたともいえるでしょう。

今回は、アメリカで将来を期待された有望選手がホークス入団に至った経緯や、昨年「米アマチュアNo.1右腕」と称されたスチュワート投手の成績・特徴、スチュワート投手側の狙いと海外の反応などを解説します。

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スチュワート投手のプロフィールや成績・特徴

まずはスチュワート投手のプロフィールをご紹介します。

プロフィール
選手名:カーター・スチュワート・ジュニア

国籍 :アメリカ

生年月日:1999年11月2日

身長体重:198cm・101kg

ポジション:投手

投球・打席:右投右打

年俸:1億1000万(推定)

経歴 :フロリダ州オー・ガリー高校→東フロリダ州立短大→福岡ソフトバンクホークス

スチュワート投手は高校時代、左足を大きくあげる躍動感あるフォームから98マイルの速球(約157km/h)を武器に活躍。130km/h台後半の大きなカーブなど、変化球を織り交ぜ打者を翻弄します。

2017年はジュニアで11勝2敗、防御率0.81・104奪三振、翌2018年はシニアで6勝2敗、防御率0.91・128奪三振という成績を残し、フロリダ州のGatorade Baseball Player of the Yearに選ばれたことから、2018年MLBドラフト前には「アマチュアNo.1右腕」と話題になりました。そしてアトランタ・ブレーブスから1巡目(全体の8番目)で指名を受けます。

しかしその後に行われたメディカルチェックで、右手首に異常が発覚。米メディアなどによると当初契約金は498万ドルと言われていましたが、これを理由にブレーブスは提示額を200万ドル程度へ変更します。この金額とスチュワート投手側の希望とは大きな開きがあり、代理人スコット・ボラス氏をたて交渉を続けますが、ドラフト交渉期限の7月上旬までに契約合意とはなりませんでした。

当初スチュワート投手には特例で2019年ドラフトへの参加が認められていたため、再度上位指名を目指し東フロリダ州立短大へ進学しました。

しかし、先述した通りスチュワート投手は2019年MLBドラフトを目指さず、福岡ソフトバンクホークスへの入団を決めます。この契約にはどのような意図があったのでしょうか?

スチュワート投手のソフトバンク入団の経緯

スチュワート投手の選択肢は当時、2通り考えられていました。1つはブレーブス側が提示する200万ドル(約2億1500万円)で契約を結ぶ道と、翌年のMLBドラフトを待って再度上位指名を狙う道です。

当初スチュワート投手は最短でMLB入りするため、東フロリダ州立短大へ進学を決めていました。同大学ではNJCAAに所属する「EFSCタイタンズ」でプレーし、13試合に先発。2勝2敗・防御率1.70・108奪三振という成績をあげています。

一般的にアメリカ大学野球は4年制大学のNCAA(全米大学体育協会)が有名で、のちにMLBで活躍する選手の多くはNCAAのディビジョン1や2に所属するチームに在籍していることが多くみられます。

NJCAAは2年制大学の野球リーグでは最も大きな組織となりますが、やはりMLBを目指す選手の多くはNCAAディビジョン1に属していることが多く、NJCAAはやや格落ちな印象を受けます。そのため、再度上位指名が確実と言われていたスチュワート投手ですが、大学トップリーグではない場で勝ち星をあげても、昨年より評価が上回ることは考えにくいとみられていました。

そして200万ドルで契約しブレーブスへ入団した場合、現状のMLBのルールではいかに有能な選手でもドラフト指名選手にはマイナー契約しか認めていないため、現在19歳のスチュワート投手が順調な昇格を経ても、メジャーデビューまで3・4年程度はかかるとみられています。

さらにMLBでは新人の契約金総額も球団ごとに決められており、球団との年俸の交渉を行なえる「年俸調停権」を得るにはMLBで3年の実績が必要です。それまでは実質、最低保障額である55万5000ドル(約6100万円)の年俸しか得られず、もし順調に成長を遂げたとしてもスチュワート投手が6年間で得られる総額は、400万ドルほどと言われています。

一方、今回スチュワート投手とホークスが結んだ契約は、6年700万ドル(約7億7000万円)保証で、出来高を含めると1200万ドル(約12億9000万円)の大型契約となります。さらにNPBで早くから一軍へ昇格できれば、メジャー在籍経験のある選手やメジャークラスの選手と対戦できる貴重な経験を積むことができます。そしてここで良い成績を残せば、将来のMLB移籍へ大きなアピールとなることでしょう。

また、金銭面・キャリアアップ以外にも、6年間の契約終了後ポスティングシステムを利用することで、MLBで契約した場合より早く他のMLB球団との交渉を行うことが可能です。このようにスチュワート投手とホークスとの契約は金銭面だけでなく、選手としてのキャリアマネージメントにも非常に魅力的な契約だったのです。

スチュワート投手について海外の反応

今回のスチュワート投手の契約について、海外の反応は概ね「賢い・良い判断」と評価を得ています。米メディアでは「マイナーで下積みをするより、日本の野球で育てられる方が充実した経験になるだろう」「米中西部で次第に衰えるより遥かに優れている」との意見がみられます。

中には「ドラフト全体で8番目に指名された選手のすることではない」という意見もありますが、NPBに対する「世界でもトップクラスのナショナルチームを抱えるリーグ」という信頼もあり、海外で異なるシステムで学ぶことはスチュワート投手のような若い選手にとっては得るものが大きいのではないかという意見が多いようです。

スチュワート投手・日米野球の未来

先日スチュワート投手は来日後初のブルペン投球を行い、6・7割の力で29球を投げました。ストレートの最速は138km/hながら回転数は2300~2400を推移し、スチュワート選手最速の158km/hに換算すると、千賀滉大投手に匹敵する回転数を計測しています。

ストレートの他にも、スチュワート投手の持ち味である大きく鋭いカーブ・チェンジアップ・スライダーを投げ、NPB使用球での変化を確かめていました。

気になる右手首も問題なく、このまま順調に調整を続け、早ければ7月上旬にも三軍デビューの可能性があるとのことです。

ちなみにスチュワート投手の投球がこれ。四国アイランドリーグの香川戦でMAX156km/hを計測しています(6:19秒あたり)。

そして今回の入団について大きなカギとなったMLBの契約は、今後の日米の関係に風穴を開けたようにも見えます。今後も現状のルールが続くなら、MLBよりもNPBを選ぶ可能性はありますが、今回のようなケースが続いた場合MLB側のルール変更も当然考えられます。そして資金力で比較すれば、やはり注目選手の争奪戦は現実的ではありません。

むしろチャンスとなるのは、MLBドラフト下位指名選手の獲得です。これまで下位指名でメジャーデビューを狙う選手は、低い契約金と年俸を受け入れるか独立リーグで名をあげるしか選択肢がありませんでした。しかし今後NPBでキャリアを積み、数年後MLBへ移籍する“逆輸入”とも言える契約を結ぶ、若い選手は増える可能性があります。

ちなみにスチュワート投手はマイナーリーグを経験していないため、特例で新人王の資格が与えられます。今までに前例のなかったアメリカアマチュア球界のトップ・プロスペクトが日本プロ野球界でどのように育ち、どのような成績を残していくのか、スチュワート投手の今後の活躍に期待しましょう。

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