令和の怪物・佐々木朗希投手!登板回避は是か非か?

2019年夏の全国高校野球野球選手権大会が今年も始まりました。大会前に大きな話題となったのが、岩手県大会決勝で惜しくも敗退した大船渡高校・佐々木朗希投手の登板回避の件です。

今年4月のU-18日本代表合宿で、高校生最速の163km//hを記録した佐々木投手ですが、岩手県大会決勝を登板回避。チームは敗退し甲子園出場を逃したことは野球ファン・関係者のみならず、ワイドショーや新聞の一般紙面でも取り上げられるほどの大きな反響を呼びました。

そこで今回は佐々木投手のプロフィールや選手としての特徴、なぜ登板回避に至ったのか?など、野球評論家や関係者の意見を交えて考察します。

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佐々木朗希投手のプロフィール・経歴

ここにタイトル
選手名  :佐々木朗希(ささき ろうき)

出身地  :岩手県

生年月日 :2001年11月3日

身長体重 :189cm・81kg

ポジション:投手

投球・打席:右投右打

経歴   :高田小・稲川小→大船渡一中→大船渡高

佐々木朗希投手は高田小で野球を始めますが、東日本大震災で被災し稲川小へ転校。その後も野球を続け、大船渡一中では軟式野球部に所属します。

大船渡高に進んだ佐々木投手は1年夏からベンチ入りし、147km/hを記録し注目を集めます。154km/hを記録した2年夏は県大会ベスト4。そして3年春のU-18日本代表合宿で163km//hを記録し、夏の甲子園大会出場の期待が高まっていました。

佐々木朗希投手の特徴

佐々木朗希投手の特徴は、何と言っても最速163km/hを誇る速球です。その才能は大船渡高校へ進学後、さらに開花。速球のみならず、キレのあるスライダー・落差のあるフォーク・145km/hを記録したチェンジアップ、すべてのコントロールが良く、スケールの大きさを感じる投手へと成長しました。

同じ岩手県出身であることから大谷翔平投手(現・エンジェルス)と比較されることが多いですが、豪腕でありながら力感がなく、高身長とゆったりとした間合いから投げ下ろされる投球は、どちらかというと東北高のダルビッシュ有投手(現・カブス)を彷彿させます

そんな佐々木投手の投球フォームは、セットポジションから左足をかなり高くあげるのが特徴。高身長で高く足を上げてもバランスが崩れないのは、股関節が柔らかく体幹が良い証拠です。ストライドが大きく体重移動もしっかりできたダイナミックなフォームですが、それだけに股関節への負担が気になるところでもありました。そこに追い打ちをかけるのが、高校野球の県大会を含めた過酷な日程です。

大船渡高・佐々木朗希投手 登板回避の経緯

今季、夏の全国高校野球選手権大会岩手県大会で、佐々木朗希投手が登板したのは以下の通り。

2回戦(16日)遠野緑峰 2回19球
3回戦(18日)一戸 6回93球
4回戦(21日)盛岡四 12回194球
準決勝(24日)一関工 9回129球

通常プロ野球の先発投手であれば、どんなに理想的な投球フォームで投げていても必ず身体のどこかに負担がかかるので、5日は登板間隔を空けたいところです。

しかし高校野球において強豪校のように複数のエース候補がいない場合、たったひとりの投手が県大会から甲子園までチームを背負って投げ続けることになります。大船渡高の場合、佐々木投手が登板しない日や佐々木投手降板後は、中学からのチームメイトである和田吟太投手や大和田健人投手が試合を任され、大和田投手は2回戦・準々決勝を、和田投手が準々決勝を投げていました。

しかし和田投手・大和田投手も、準々決勝で投げた精神的疲労が残っていたため決勝では登板せず、今大会初登板となった柴田貴広投手が決勝戦のマウンドに立ちます。今大会前に調子が良かったサイドスロー・柴田投手の沈む球に期待がかかりましたが、花巻東の強力打線の前に2-12で敗れ、甲子園出場を逃しました。



大船渡高・國保監督の決断は英断か独断か

佐々木朗希投手は準決勝直前に、右ひじに違和感を感じていたと伝えられています。そして決勝は大船渡高・國保監督は、投球間隔や当日の気温など総合的な判断で登板を回避。佐々木投手は打撃・走塁も優れた選手ですが、守備に就くと試合展開により100%の力で投げなければならないことを懸念し、野手としての出場機会も考えていなかったそうです。

これには将来を期待される才能を持った選手を抱える監督の、人知れぬ苦悩があります。大谷翔平投手を指導した花巻東・佐々木監督は過去のインタビューで、「才能あふれる選手の未来を自分の指導で潰してはいけない」という怖さ、チーム作りの難しさがあったと語っています。

スポーツ関連の医師によると身体を壊してしまわないように、身体より先に脳が疲労感や違和感を作っていると言います。しかし甲子園のような大きな舞台がかかった試合ともなるとその高揚感から疲労感が薄れてしまい、結果的に故障を発症しやすい状態になってしまうそうです。

もちろん高校野球の監督としてはチーム全員の夢である甲子園出場が至上命題です。しかし球界の至宝になりえる選手を万全の状態でプロ野球へ送り出すことも、蔑ろにはできないのです。

佐々木朗希投手の登板回避 野球評論家・スカウト・海外の反応

國保監督の決断は、世論では「個を尊重した監督の英断」として受け入れられ、野球評論家・桑田真澄氏など、甲子園を経験した元プロ野球選手からも同様の声が上がっています。奇しくも横浜DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手は今年1月、近年の勝利至上主義に偏るアマチュア野球の指導の現状に警笛を鳴らしています。他にもシカゴカブス・ダルビッシュ有投手は「佐々木君の未来を守った」と評価しています。

しかし一方で花巻東や盛岡大付属などの強豪校を抑え、大船渡高の35年ぶりとなる甲子園出場の期待が高まっていただけに、苦情も相次ぎました。決勝戦翌日は200件を超える電話での苦情が殺到し、警察も出動する事態にまで発展しました。OBのみならず元プロ野球選手からは、「全員が甲子園を目指して練習してきたのに、故障もしていない一選手の将来を案じて登板させないのはおかしい」という意見や、もっと早い段階で休ませればよかったという声もあります。

では佐々木投手の快投が見られるのは、NPBやMLB入団以降になるのでしょうか?佐々木投手は複数球団の指名が確実視され、今秋ドラフトの注目株という評判です。その投球はMLBのスカウトをも唸らせ、視察に訪れていたフィリーズのスカウトは「サイ・ヤング賞を狙える逸材」と称しました。

「甲子園出場が夢だったのになぜ投げさせなかったのか」「無理強いをして故障したらどうするんだ」、今はどちらが正解とも言えない状況にあります。ただ、現時点で一番悔しい思いをしているのは佐々木投手本人と、一緒に甲子園を目指してきたチームメイトでしょう。

この登板回避が佐々木朗希投手のみならずチームメイトや監督、プロ野球関係者や野球を愛するすべての人にとって「英断だった」と思えるような未来を期待しています。

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