どうもマツローです。
11月1日、女子プロ野球界に激震が走りました。
女子プロ野球リーグ所属選手71人のうち、今シーズン限りで約半数の36人が退団することが発表されたのです。
いったい女子プロ野球界に何があったのか。そもそも女子野球の世界とはどういう仕組みになっているのか。プロとアマチュアの関係はどうなっているのか。
この記事ではプロだけでなく、「女子野球」全体について調べたことについてまとめてみました。どうぞ最後までお付き合いください。
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Contents
女子プロ野球のチーム数と試合数について
まずは話題となっている女子プロ野球から見ていきましょう。
女子プロ野球は、一般社団法人日本女子プロ野球機構(JWBL)が主催しています。チームは4チームあり、3チームは正会員、1チームは準会員という構成となっています。
正会員の3チームは「愛知ディオーネ」、「京都フローラ」、そして「埼玉アストライア」、準会員のチーム名は「レイア」です。
正会員と準会員の違いですが、MLBを例に採り説明しますと、正会員の3チームは「メジャー」、準会員のレイアは「マイナー」ということになります。つまり、レイアは正会員3チームでプレーするには技量に劣る選手が鍛錬・育成をするためのチームで、レイアの選手名鑑を見ますと所属する選手の多くが新人選手となっていました。
リーグ戦は正会員3チームによる総当たり戦で行われます。2019年は春季・夏季・秋季の3シーズンに分かれ、各総当たり22回戦のリーグ戦で年間66試合を行い、京都フローラが優勝しました。
また、リーグ戦とは別に「ティアラカップ」というカップ戦(トーナメント戦)も開催されています。これは正会員の3チームに加え、育成チームであるレイアを加えた4チームで行うこととなっていましたが、2019年はレイアが「正会員と対等に戦う技量に達していない」という理由により参戦せず、代わりに正会員3チームから選手を出し合い、「ライオネス」という混成チームを結成し、カップ戦に挑みました。
2019年のティアラカップは、8月3日~4日に熊本大会、同じく17日~18日に北海道大会が予定されていました。熊本大会は埼玉アストライアの優勝でしたが、北海道大会は悪天候のため大会そのものが中止となってしまいました。
11月には「女子野球ジャパンカップ」というプロアマ混合の女王座決定戦が開催されます。
ジャパンカップへの参加資格は、プロ野球はティアラカップの3位まで3チームに参加資格が与えられます。
アマチュアチームの参加資格については、次項で説明していきます。
アマチュア女子野球について
アマチュアの女子野球チームは一般社団法人全日本女子野球連盟(WBFJ)が管轄し、その傘下に高校連盟、大学連盟、クラブチーム連盟があります。
ジャパンカップ参加という視点から、ぞれについて簡単に説明しましょう。
高校野球
高校ですが、連盟には24の高校が加盟しています。その中には2019年夏の甲子園を制した履正社や埼玉栄、福知山成美そして神村学園など男子野球でも有名な高校が参加しています。
中でも埼玉栄や神村学園は女子野球の強豪校としてご存知の方もいるかも知れません。
そして男子野球同様、春には選抜大会、夏には選手権大会が開催されています。2019年開催の大会で選抜は第20回、選手権は第23回を数えました。
夏の選手権大会でベスト4に進んだチームが、ジャパンカップへの参加資格を得ます。今年は作新学院、履正社、福知山成美そして札幌新陽の4校が出場を果たしました。
大学野球
全国大学女子硬式野球連盟主催による大学選手権が毎年10月に行われ、この大会の上位2チームがジャパンカップへと駒を進めます。
2019年は8チーム参加により大会が行われ、埼玉県の尚美学園大が優勝、準優勝は岡山県の環太平洋大学でした。よって決勝を戦ったこの2校がジャパンカップへ参加します。
なおこれとは別に春には高知県で大学選手権高知大会(通称春季大会)が開催されています。
クラブチーム
全日本クラブ連盟に加盟している女子チームは19チームあります。
この19チームと、高校の選抜大会ベスト8、大学は春季大会の上位6チームが集い、8月に全日本硬式野球選手権大会(以下全日本選手権)が開かれます。
そして、この大会で成績上位だった8チームによってクラブチーム日本一を決める全日本女子硬式クラブ野球選手権大会(以下クラブ選手権)が開催され、クラブ選手権で決勝進出した2チームがジャパンカップに出場します。
2019年は台風19号の影響により、クラブ選手権は中止されました。
なおこのクラブ選手権中止を巡って、プロとアマのズレが露見されてしまったのです。
ジャパンカップをめぐる見解の違い
ジャパンカップの主催者はJWBL(プロ側)です。そして、クラブチームの代表を決定するのは当然ながらWBFJです。
例年、クラブチームの代表を決定するクラブ選手権が、台風の直撃という不可抗力で開催出来なかったのですから、WBFJとしては全日本選手権の成績上位2チームをジャパンカップに出場させようとしました。この選考に多くの方は納得されるでしょう。
しかし、JBWLは「クラブ選手権が開催されなかった=正式な代表選考会を経ていない」としてWBFJの推薦を拒否したのです。
この結果、2019年のジャパンカップは、例年とは違いクラブチーム(アマチュア)を除く、プロ・大学・高校の代表が争うという結果となりました。
これをJWBLとWBFJの対立、更には今回の選手の大量離脱と結びつけるのは暴論でしょうか。
加藤優選手のメッセージに秘められた「願い」
今回、女子プロ野球を退団する選手の一人に加藤優選手という方がいます。
加藤選手は埼玉アストライアに所属していた、女子プロ球界を代表する人気選手です。その加藤選手が退団発表後に更新したインスタグラムに次のように書いていました。
「野球をする女の子の目標となるチーム・環境を作っていかなければならない。」
プロ選手である(あった)加藤選手が、プロの環境は「目標となるものではない」と語っているようにも思えますが、実はそうではないのです。
純粋に野球がしたい。野球に集中したい。野球が上手くなりたい。
でも、「今の」プロ野球界ではそれが不可能だと。だから退団するのだと。
その加藤選手の悲痛な叫びは、どうして生まれてしまったのでしょうか。
プロ野球新規参入募集は本気だったのか
2019年8月、JWBLは女子リーグの窮状を訴える会見を行いました。
曰く、女子リーグは1つの会社が4つのチームを運営していて「このままでは運営が立ち行かなくなるので新規参入を募ります」とのことでした。
しかし、JWBLは会見でこうも付け加えました。
「今まで女子リーグに100億円近い資金を投入してきた。だから新規参入しても、既存の会社が運営するチームを優先して欲しい」
つまり、遠回しに既存のチームに対して「忖度」を要求しているのです。
この条件が付いている中で、「プロ」という体裁を保ちながら新規参入する事業者が現れると本気で思ったのでしょうか。
まとめ
「日本プロ野球の父」と呼ばれる読売巨人軍初代オーナー・正力松太郎氏が、阪神や阪急のプロ野球進出を許さず、「読売軍」と「報知軍」そして「日テレ軍」を創り、その3チームでプロ野球です、と言われて果たして人気が出るでしょうか。
今の女子プロ野球はまさにこの状態なのです。
広くプロ野球を広めたのならば、自分たちだけの力ではどうしようもない、ということは身に沁みているはずですから、次にやるべきことはリーグの縮小や、レジェンドクラスの選手に無情な構想外通告をすることではないのです。
玄関にカギを掛けて「お客さんが来ない」と嘆いていても、何の解決にもなりません。
せっかく広がった女子野球の裾野を、みすみす畳むようなことだけはないように、翼を広げて欲しいと切に願わずにはいられません。
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