どうもマツローです。
プロ野球において常勝チームには、「良い抑え投手」が必要不可欠です。勝ち試合を締めくくるストッパーの失点はチームの敗戦に直結するため、高い投球術に加え強い精神力も必要だと言われます。
そこで今回は抑え投手にスポットを当て、防御率・セーブ数、投球内容を表すWHIPやK/BBなどさまざまな角度から分析し、NPB史上最強のストッパーをランキング形式で決定します。
今回日本人選手のなかで最強のストッパー候補に挙げるのは、200セーブ以上を達成しチームに一時代を築いた以下の6選手です。
高津臣吾選手
岩瀬仁紀選手
サファテ選手
江夏豊選手
藤川球児選手
時代を超えて伝説を残している6名の選手たちを、さまざまな項目ごとにランキングしていますが、
先発・中継ぎ経験のある抑え投手に関しましては、中継ぎ・抑えでの登板数が先発での登板数を上回る年のみを計算しています。
またMLBを経験している投手は、MLBでの記録も含めた通算記録で算出しました。尚、独立リーグに関しましては記録に含めないものとします。
ランキング方法としては、各項目ごとに順位を付けていき、1位の選手に6ポイント・2位の選手に5ポイント・3位の選手に4ポイント・4位の選手に3ポイント・5位の選手に2ポイント・6位の選手に1ポイントを加算し、トータルポイントの最も高かった選手を歴代最高ストッパーとします。
あくまで個人的な見解によるランキングですが、数々の伝説を残したクローザーの活躍を思い浮かべながら、お楽しみいただけると嬉しいです。
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NPB最強のストッパーをご紹介!Top of Legend.6
ではまず、各選手の略歴を紹介します。
世界に降臨したハマの大魔神 佐々木主浩選手
投球・打席:右投右打
経歴 :東北高→東北福祉大
→横浜大洋ホエールズ・横浜ベイスターズ(1990~1999)
→シアトル・マリナーズ(2000~2003)
→横浜ベイスターズ(2004~2005)
1989年のドラフト会議で、横浜大洋ホエールズから1位指名を受け入団。2年目に抑え投手に抜擢されます。NPBでは歴代3位となる252セーブ・MLBでは日本人選手最多となる129セーブを記録し、日本人史上初の通算300セーブを達成しました。
また、旧公式記録ではありますが、NPBにおいてシーズン最多・通算最多のセーブポイント記録保持者でもあります。
全盛期は最速154km/hの速球と落差の大きなフォークが武器。横浜時代につけられた“大魔神”の代名詞は、MLBでも親しまれていました。
2つのシンカーを操るミスターゼロ 高津臣吾選手
投球・打席:右投右打
経歴 :広島工業高→亜細亜大
→ヤクルトスワローズ(1991~2003)
→シカゴ・ホワイトソックス(2004~2005)
→ニューヨーク・メッツ(2005)
→東京ヤクルトスワローズ(2006~2007)
→ウリ・ヒーローズ(2008)
→興農ブルズ(2010)
→新潟アルビレックスBC(2011~2012)
1990年のドラフト会議で、ヤクルトスワローズから3位指名を受け入団。1993年より抑えに転向し、当時の球団セーブ記録を塗り替える活躍を見せます。
サイドスローから高速・低速の2種類のシンカーを操り、ホワイトソックス移籍後は「ミスターゼロ」と呼ばれるまでの活躍を見せました。NPBでは歴代2位となる通算286セーブ・史上2人目となる日米通算300セーブを達成。
ヤクルトからMLB2球団を経てヤクルト復帰の後、米マイナーリーグ・韓国リーグ・再び米マイナーリーグ・台湾リーグから日本の独立リーグと、数々のリーグを渡り歩き、最後までマウンドに立ち続けることにこだわり続けました。
「死神の鎌」を携えたタフネス 岩瀬仁紀選手
投球・打席:左投左打
経歴 :西尾東高→愛知大→NTT東海
→中日ドラゴンズ(1999~2018)
1998年のドラフト会議で中日ドラゴンズを逆指名し、2位で入団。ルーキーイヤーから最優秀中継ぎ投手賞を受賞するほどの活躍を見せ、2004年から抑えに転向します。
「死神の鎌」に例えられるほどの切れ味鋭いスライダーを武器に、NPB最多セーブである407セーブを樹立。シーズン46セーブは、日本人投手としては藤川球児選手と並ぶ最多記録です。
また、ルーキーイヤーより2013年まで15年連続50試合以上登板を記録し、通算1002回登板のNPB最多登板記録保持者でもあります。
投手としての高い技術とタフネス、6度の日本シリーズで1度も失点したことのない勝負強さを兼ね揃えた、まさに理想のクローザーと言えるでしょう。
ニューヨークから来た“KING OF CLOSER” サファテ選手
投球・打席:右投右打
経歴 :ギルバート高→アリゾナ州立大
→ミルウォーキー・ブルワーズ(2006)
→ヒューストン・アストロズ(2007)
→ボルチモア・オリオールズ(2008~2009)
→広島東洋カープ(2011~2012)
→埼玉西武ライオンズ(2013)
→福岡ソフトバンクホークス(2014~)
2001年のMLBドラフトで、ミルウォーキー・ブルワーズから9巡目指名を受け入団。MLBでは短期間で3球団を渡り歩き、骨折や血行障害・マイナーでの登板を経験しました。
広島へ入団後は抑えとして才能が開花。課題だった制球難も改善し、最速161km/h・平均151km/hのストレートを武器に、広島退団後は西武・ソフトバンクで活躍します。広島・西武ではチーム事情により中継ぎとして起用されることもありましたが、ソフトバンク移籍後はクローザーに固定されます。
その結果、43イニング連続奪三振記録・シーズン最多セーブ記録となる54セーブを達成。NPB史上初の両リーグ30セーブを達成しました。
蘇る火の玉ストレート 藤川球児選手
投球・打席:右投左打
経歴 :高知商高
→阪神タイガース(1999~2012)
→シカゴ・カブス(2013~2014)
→テキサス・レンジャーズ(2015)
→高知ファイティングドッグス(2015)
→阪神タイガース(2016~)
1998年のドラフト会議で、阪神タイガースから1位指名を受け入団。入団当初は先発としてなかなか芽がでず、5年目となる2003年のファーム日本選手権で胴上げ投手となったことをきっかけに、翌年から中継ぎ、2006年から抑えに転向しました。
そんな藤川選手の最大の武器は、当時最速156km/hを記録した「火の玉ストレート」。日本人選手として岩瀬仁紀選手と並ぶNPB最多の47セーブの記録保持者です。球速は衰えようとも、フォークなどの変化球と質の良いストレートで変わらぬ高い奪三振率を誇り、海を渡りました。
MLB2球団・四国ILの高知ファイティングドッグを渡り歩き、現在は阪神へ復帰。現役ではNPB最多セーブを保持しています。
先発・抑えで活躍した20世紀最高の投手 江夏豊選手
投球・打席:左投左打
経歴 :大阪学院大高
→阪神タイガース(1967~1975)
→南海ホークス(1976~1977)
→広島東洋カープ(1978~1980)
→日本ハムファイターズ(1981~1983)
→西武ライオンズ(1984)
1966年の第1次ドラフト会議で、阪神タイガースから1位指名を受け入団。阪神ではルーキーイヤーより先発として活躍し、奪三振王を皮切りに最多勝・最優秀防御率・沢村賞など、偉大な賞を次々と受賞します。入団たった4年で通算1000奪三振やノーヒットノーランも達成しますが、チームの内紛や血行障害による成績低下を理由に1976年南海へトレード。
移籍2年目の1977年より抑えに転向し、最優秀救援投手賞を受賞します。その後は持ち前の速球と変化球を巧みに操る投球術に磨きをかけ、広島・日ハム・西武を渡り歩きました。
打者との綿密な駆け引きで築き上げた記録は206勝、セーブ記録が採用される以前の1967~1973年にあげた37セーブを加算すれば230セーブにも及びます。この記録を一人で達成できる選手は、今後もなかなか現れないのではないでしょうか?
項目別通算・シーズン最高記録ランキング
通算防御率や通算セーブ数、またはピーク時を比較する単年での最高記録など、上記6名の選手を項目別にランキングしました。
各項目のデータに関してはNPB/MLBの記録を用い、独立リーグでの記録は含みません。
先発・中継ぎ経験のある抑え投手に関しましては、通算セーブ数以外、中継ぎ・抑えでの登板数が先発での登板数を上回る年のデータを採用しています。
したがって江夏選手の記録は、先発での登板が抑えより多かった阪神時代・南海移籍1年目のデータは、通算セーブ数以外計算に入れていません。
1.通算防御率
1位 藤川球児選手 2.00
2位 サファテ選手 2.21
3位 岩瀬仁紀選手 2.31
4位 佐々木主浩選手 2.60
5位 江夏豊選手 2.65
6位 高津臣吾選手 3.11
通常、クローザーの防御率は先発投手より良い傾向にありますが、藤川選手は2019年9月に通算防御率1点台をマークするなど、今後さらに期待できる数値を残しています。その凄さは、2位のサファテ選手との投球回数が倍以上違うことからも伺えます。
2.通算セーブ数
1位 岩瀬仁紀選手 407
2位 佐々木主浩選手 381
3位 高津臣吾選手 347
4位 藤川球児選手 243
5位 サファテ選手 234
6位 江夏豊選手 230
江夏選手のセーブ記録については公式記録ではありませんが、セーブ記録が採用される以前の1967~1973年にあげた37セーブを加算しています。
岩瀬選手の記録はNPB歴代最多セーブ記録。佐々木選手の記録も充分驚異の数値ですが、佐々木選手は回を跨いで投げるケースが多く、勝利数も多くなっています。
3.通算奪三振率
1位 藤川球児選手 11.99
2位 佐々木主浩選手 11.76
3位 サファテ選手 11.45
4位 江夏豊選手 9.13
5位 岩瀬仁紀選手 7.68
6位 高津臣吾選手 7.11
奪三振率は少なければ打たせて取る投手、高ければ三振を取る投手と言われ、評価基準は9.0を超えると典型的な三振を取る投手と認識されます。
速球とフォークのコンビネーションで打者を翻弄する、藤川選手や佐々木選手が上位にランクインするのも頷けます。
4.通算WHIP
1位 佐々木主浩選手 0.99
2位 藤川球児選手 1.02
3位 サファテ選手 1.03
4位 江夏豊選手 1.10
5位 岩瀬仁紀選手 1.13
6位 高津臣吾選手 1.24
WHIPは1イニングあたり何人の走者を出したかを表す数値で、走者が少なければ失点する可能性も低くなるため、投手の安定度を表します。
抑え投手は総じて低いのですが、1位の佐々木選手は通算記録でほぼ走者を出していないという、驚異のデータを叩き出しました。
5.通算K/BB
1位 藤川球児選手 3.81
2位 佐々木主浩選手 3.79
3位 岩瀬仁紀選手 3.45
4位 サファテ選手 3.44
5位 江夏豊選手 3.13
6位 高津臣吾選手 2.37
K/BBは四球1つを与えるまでにどれだけ三振が奪えるかという指標で、この数値が高いほど試合を優位に運んでいるといえます。
ほぼ差のない結果ではありますが、奪三振率でも上位にランクインした藤川選手と佐々木選手は、共に質の良いストレートとフォークを巧みに使い、打者を三振に追い込んでいるといえます。
6.通算FIP
1位 藤川球児選手 2.309
2位 サファテ選手 2.425
3位 岩瀬仁紀選手 2.661
4位 佐々木主浩選手 2.679
5位 江夏豊選手 3.267
6位 高津臣吾選手 3.893
FIPとはチームの守備力や偶然の要素を省き、奪三振・与四死球・被本塁打という、純粋に投手の能力を評価する指標です。この指標ではサファテ選手が2位にランクイン。
サファテ選手の投球内容はストレートが8割を占めることから、球威のある速球で打者に付け入るスキを与えない選手であることが伺えます。
7.タイトル通算獲得回数
1位 佐々木主浩選手 :14回
最優秀救援投手5回 リーグMVP1回 ベストナイン1回 最優秀投手1回 ファイアマン賞5回 正力松太郎賞1回 MLB新人王1回
2位 高津臣吾選手 :9回
最優秀救援投手4回 ファイアマン賞3回 セ・リーグ連盟特別表彰1回 Baseball Digest ルーキーオールスターチーム・クローザー部門1回
2位 江夏豊選手 :9回
最優秀救援投手5回 リーグMVP2回 ファイアマン賞2回
4位 サファテ選手 :7回
最多セーブ投手3回 リーグMVP1回 パ・リーグ連盟特別表彰2回 正力松太郎賞1回
5位 岩瀬仁紀選手 :6回
最多セーブ投手5回 セ・リーグ連盟特別表彰:1回
6位 藤川球児選手 :2回
最多セーブ投手2回
こちらの記録は、あくまでもクローザーとして獲得したタイトルに限り計算しているので、先発投手として数々の賞を獲得した江夏選手には、若干不利な項目となってしまいました。
1位となった佐々木選手と2位の江夏選手の最優秀救援投手5回は、NPB最多タイ記録。
江夏選手のリーグMVPは、セ・パ両リーグから1回ずつの受賞で、両リーグでの受賞は史上初です。
同率2位の高津選手のセ・リーグ連盟特別表彰は、当時の通算セーブNPB新記録を達成したことを称したものです。
4位のサファテ選手の正力松太郎賞は、NPBシーズン最多セーブ新記録達成を称したもので、外国人選手初の受賞。
5位の岩瀬選手の最多セーブ投手5回は、NPB最多記録となりました。
8.シーズン最高防御率
1位 佐々木主浩選手 0.64(1998年)
2位 藤川球児選手 0.67(2008年)
3位 サファテ選手 1.05(2014年)
4位 岩瀬仁紀選手 1.30(2006年)
5位 江夏豊選手 1.98(1982年)
6位 高津臣吾選手 2.04(1997年)
最高防御率のシーズン記録は、クローザーとして活躍した年の防御率が対象で、ピーク時の能力を反映しています。江夏選手に関しましては、抑えに転向した1977年以降の防御率を参照しています。どの選手も目を見張るような防御率ですが、特に1点台を切った佐々木選手と藤川選手の記録は圧巻です。
9.シーズン最多セーブ数
1位 サファテ選手 54(2017年)
2位 岩瀬仁紀選手 46(2005年)
2位 藤川球児選手 46(2007年)
4位 佐々木主浩選手 45(1998年・2001年)
5位 高津臣吾選手 37(2001年)
6位 江夏豊選手 34(1983年)
1位のサファテ選手の記録はNPB最多記録、同率2位の岩瀬選手・藤川選手の記録は、日本人としての最多記録です。単年のセーブ数でランク付けするとこのような結果になりますが、日本人最多セーブとひとつ少ない記録を2回もたたき出す佐々木選手の能力にも驚かされます。
最強ストッパー総合ランキング発表
以上、9項目に分けてポイントを集計した最強ストッパーランキングです。
1位 藤川球児選手 43ポイント
2位 佐々木主浩選手 42ポイント
3位 サファテ選手 36ポイント
4位 岩瀬仁紀選手 32ポイント
5位 江夏豊選手 21ポイント
6位 高津臣吾選手 17ポイント
最強のストッパーは藤川球児選手
今回のプロ野球史上最強のストッパーランキングでは、ほとんどの項目で上位にランクインした藤川選手と佐々木選手が1位と2位になりました。
僅差での争いとなった2名の選手ですが、共に質の良いストレートと落差のあるフォークで三振の山を築いた投手です。こういった投球術を磨くことで近年故障からの復帰に苦しむ3位のサファテ選手も、まだまだ記録を伸ばすきっかけをつかめるかもしれません。
そして前人未到の大記録を見せてくれた岩瀬選手は4位。その金字塔は少しも揺らぐものではありませんが、6位の高津選手しかり、今回の項目では晩年の「打たせて取る」投球術は不利に働いたのだと思います。
また、先発としても抑えとしても超一流の記録を残した5位の江夏選手に関しては、もし時代が少し違っていたら起用法も変わりますので、すべての選手の記録を凌駕する可能性もあったのではないかと、数々の素晴らしい記録を目に思いを馳せずにはいられません。
数々の感動と伝説をデータで分析すると、また違った一面が見えてきます。数値だけで選手の素晴らしさは語れませんが、時にこういった目線で野球を楽しむのも野球の奥深さを知る良い機会になると思います。
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