野球の試合で勝利への貢献度を示す指標。それが「WAR」という指標です。
従来の野球の指標は野手の場合、打率・本塁打・打点・盗塁、投手の場合は防御率・勝利数・奪三振数等によって評価されていました。
しかし、これらの指標はチームに一体何勝をもたらしたのか計ることはできません。
チームスポーツではチームが勝つことが最も重要で、WARは“勝利をもたらした数”を示す指標となっています。
これから、WARの概要と実際にWARが高かった選手をご紹介します。
スポンサーリンク
WARとは
WARは「控え選手が出場した場合と比べて勝利に貢献した数」を示す指標です。
WARは野手の場合、打撃・守備・走塁のあらゆる指標を用いて複雑に計算されます。
そのため、比較することが難しい「打撃が得意な選手」と「守備が得意な選手」を数値化して“野手としての勝利への貢献度”を算出することができるのです。
投手の場合は被本塁打・与四球・奪三振等、投手の成績に加え実際に投げたイニング数によって算出されます。
先発投手は中継ぎ・抑えの投手に比べ、イニング数が多くなるため有利となります。
また、野手と投手で比べると出場試合数が多い分、野手が圧倒的に有利です。
WARの基準は以下の通りとなっています。(MLBでは「fWAR」と「rWAR」の2つの基準があります)
MVP :6.0以上 8.0以上
スーパースター :5.0 – 6.0
オールスター :4.0 – 5.0 5.0以上
好選手 :3.0 – 4.0
レギュラー :2.0 – 3.0
先発メンバー :1.0 – 2.0 2.0以上
控え :1.0以下 0-2.0
リプレイスメント:0未満 0未満
一般的なレギュラークラスの選手のWARは2.0と言われ、先発投手では4.0以上で年間を通してエースクラスの活躍と言われています。
それでは実際にWARが高かった選手をご紹介しましょう。
セ・リーグ2019年WARランキングベスト10
1位:鈴木 誠也選手(広島) WAR:8.6
セ・リーグの1位は侍ジャパンでも4番を務めて大活躍した鈴木誠也選手です。
鈴木選手が特に優れていたのはリーグ1位の打率(.335)と出塁率(.453)です。
また守備の指標であるUZRでもライトで3位の+9.3と好成績を残しています。
1位の亀井善行選手は+12.6と守備面では好成績を残していますが、打撃面では鈴木選手を上回るような成績は残せていません。
一方、本塁打王を獲得した同じく強打でライトを守るソト選手(横浜)はUZRが-17.7と守備面で大きく足を引っ張った形となり、総合力的な数値では鈴木選手が大きく上回りました。
2位:山田 哲人(ヤクルト) WAR:7.3
セ・リーグ2位はヤクルトの山田選手。打率は3割を切りトリプルスリーは逃したものの35本塁打、33盗塁と強打と俊足は健在です。
また守備面でも+0.9(セ・リーグ3位)の好成績で走・攻・守3拍子揃った活躍を見せています。
山田選手はWARランキング上位の常連なので来年の活躍も期待できます。
3位:山口 俊(巨人)WAR6.7
セ・リーグ投手の中で圧倒的な成績を残した2019年の山口投手。15勝4敗と大きく勝ち星を伸ばした結果、WARも好成績となりました。
投球回数も170イニング(リーグ5位)と多くQS率も69.23%と先発投手として安定的な成績を残し、優勝の立役者となりました。
4位:坂本 勇人(巨人) WAR:6.5
巨人の不動の遊撃手坂本選手が4位にランクイン。タイトルこそ逃したもののリーグ5位の打率(.312)、同2位の本塁打(40)、同4位の打点(94)はどれも立派な数値です。
ただUZRは-3.0(リーグ1位の京田選手が+17.5)と守備面では好成績を残せませんでした。
守備面での指標が改善されれば1位も狙える選手です。
5位:今永 昇太(横浜) WAR5.3
13勝7敗と大きく勝ち越し防御率も2.91(リーグ3位)と安定した成績を残しました。
野手有利と言われるWARでチームトップは立派な成績です。
セ・リーグの6位以下は以下の通りです。
7位:ビシエド(中日) WAR:4.3
8位:阿部 寿樹(中日)WAR:3.9
9位:青木 宣親(ヤクルト) WAR:3.8
10位:會澤 翼(広島) WAR3.8
パ・リーグ2019年WARランキングベスト10
1位:森 友哉(西武) WAR:7.8
優勝した西武の正捕手、森選手がパ・リーグのWARランキング1位に輝きました。
森選手の魅力はなんといっても打力ですね。2019年は首位打者を獲得(打率.329)。
本塁打23本、打点105本と捕手という難しいポジションをこなしながら、文句なしの成績をおさめました。UZRでは‐2.5と同一リーグの若月選手の+3.8(オリックス)や甲斐選手の3.0(ソフトバンク)にはおよばなかったものの、圧倒的な打力で勝利に貢献した捕手と言えるでしょう。
2位:外崎 修汰(西武)WAR:6.7
森選手に続き、同じく優勝した西武の外崎選手がパ・リーグの2位でした。
外崎選手は打率(.274)、本塁打(26)、打点(90)、と好成績を残し、盗塁も22個決めており、走塁面での貢献も大きい選手です。
また、2019年に主に守っていた二塁手としてはUZR+10.7は両リーグ通じてトップの数字でした。
守備の名手としてのイメージが強い菊池涼介選手が+5.0ということを考えると守備面でも相当貢献していると言えるでしょう。
3位:浅村 栄斗(楽天) WAR:6.2
2019年に西武から楽天に移籍した浅村選手がリーグ3位のWARを記録しました。
浅村選手は打率こそ少し低かった(.263)ものの本塁打(33)と打点(92)でチームに大きく貢献しました。また、UZRも+1.6とプラスとなっています。
長打率も高く(.507)長打が打てる二塁手として貴重な存在ですね。
4位:千賀 滉大(ソフトバンク) WAR:5.9
ソフトバンクのエース、千賀投手が4位にランクイン。投手としてはパ・リーグ1位の成績です。
千賀投手はストレートとお化けフォークと称される落差の大きいフォークで三振の山を築き両リーグダントツトップの227奪三振を記録しました(2位は巨人 山口俊投手の188)。
防御率も2.79(リーグ5位)で勝利数も13勝(リーグ2位)と球界を代表するピッチャーと言えるでしょう。
5位:吉田 正尚(オリックス) WAR:5.7
5位はオリックスの主砲、吉田選手です。吉田選手はリーグ2位の打率(.322)で本塁打も多く(29)確実性もあり、長打も打てるバッターです。
UZRも+1.4とプラスを保てており、同じく打力が高くレフトを守るソフトバンクのグラシアル選手(‐2.1)、日本ハムの近藤健介選手(‐6.3)を上回っています。
パ・リーグの6位以下は以下の通りです。
7位:秋山 翔吾(西武) WAR5.1
8位:山本 由伸(オリックス) WAR:5.1
9位:茂木 栄五郎(楽天) WAR:4.4
10位:ブラッシュ(楽天) WAR:4.3
まとめ
2019年WARが高かった選手、つまり勝利に貢献した選手をご紹介しました。
WARの面白いところは打力が高い選手と守備が上手い選手がどれだけ勝利に貢献しているかを数値に示している点であると言えるでしょう。
両リーグ通じて1位の鈴木誠也選手(広島)は打撃面でも守備面でも高い成績を残しており勝利に最も貢献した選手と言えるでしょう。
チームスポーツであるプロ野球はチームの勝利が最も重要です。勝利に貢献した指標を示すWARは今後も注目ですね。
ただし投手、特に中継ぎピッチャーには不利な算出方法となっているので、野手と投手で分けて注目したほうが良いでしょう。
※こんな記事も書いています。
コメントを残す